2009年11月15日

【賀曽利隆のカソリングvol.108】

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【目次】
■連載/30年目の「六大陸周遊記」第72回
■60代編日本一周第2部「北海道遺産コラム 第2回 路面電車」
■編集部からのお知らせ

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     【連載/第72回】  30年目の「六大陸周遊記」
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[前号までのあらすじ]
マラリアにやられ、ギニアではあわや身柄拘束、強制送還か! と多難な旅路
は、すいにアフリカ西海岸ダカールに到着。感慨に耽るカソリ。さあ、これか
らの旅はいかなるものに……。


大西洋の砂浜で考える

 アフリカ大陸最西端、セネガルのダカールに到着した日は、大西洋の砂浜で
野宿した。寄せては返す大西洋の波を見ていると、通り過ぎてきた西アフリカ
の国々がしきりと思い出された。そして「国境とは?」と考えてみるのだっ
た。
 西アフリカの小さな国々を旅していると、パスポートがなくても、ビザがな
くても、自由に国境を行き来できればいいのいにと何度、思ったことか。国境
に近づき、国境を越えるたびに厳しく調べられたからだ。
 まるでなにか、悪いことでもしたかのような容疑者扱いで調べられると、そ
のたびに心は重くなる。また調べられるのではないかと思うと、気持ちは萎縮
し、おどおどしてしまう。
 西アフリカの場合、国があまりにも細分化されすぎてしまった。それはアフ
リカを植民地にしたヨーロッパ諸国の罪にほかならない。
 植民地を支配しやすいようにと、そこに住む人たちの生活や文化などはまっ
たく無視し、地図上にかってに線を引いた国境線。その目に見えない国境線で
アフリカはズタズタにされてしまった。民族もいたるところで分断された。
 アフリカ諸国は独立後、それぞれの国の利益しか考えずに、隣国をののしっ
たり、攻撃している。
 日本という国は、そういう面では恵まれている。島国なので、国境という
と、海のはるかかなたになる。国境にあこがれを感じても、さしせまった問題
として、国境に脅威を感じることはない。
 また、住んでいる民族も大半が日本人で、共通の日本語という言葉がある。
たとえ方言の違いはあっても、日本語さえ話せば、日本中で何の不自由もなく
意志を通じ合わせることができる。
 ところが西アフリカ(東アフリカでもそうだが)ではそうはいかない。
 ひとつの国の中にも、いろいろな民族が住み、いろいろな言葉が使われ、さ
らに国境線でズタズタに切り裂かれている。そのために起きる問題はあとを絶
たない。
 西アフリカのそんな現実を見ると、国というものがほんとうに必要なものな
のだろうかと考えさせられてしまう。
 世界中がひとつになったら、地球上から国境線が消えたら、それこそいうこ
とはない。ところがそんな理想からはどんどんとかけ離れ、より細かく国は細
分化されている。
 民族の血というものが、あまりにも濃すぎるからだろうか。
 
ダカールでの出会い

 翌日はダカールの町へ。
 モーリタニア大使館でビザを申請し、そのあとはダカールをプラプラ歩い
た。
 町の公園では真野さん、村松さん、尾身さんの3人の日本人に出会った。真
野さんはマグロ船の航海長、村松さんは機関長。尾身さんは通訳だ。
 4人で尾身さんの泊まっているホテルに行き、ビールを飲みながらいろいろ
と話した。尾身さんは「漁船員のみなさんは飾り気がまったくないので、話し
ていてもすごく気持ちいい」といっていた。
 夕食をごちそうになり、ビールや日本酒、ジョニ黒を飲ませてもらった。漁
船のコック長がおにぎりを届けてくれたが、それがまた、飛び切りのうまさ
だった。
 何ヵ月もの長い航海のマグロ漁なだけに、操業中のトラブルは多いという。
限られた人数の狭い世界。人間関係がとくに難しいという。操業中に解雇さ
れ、日本に帰るようなケースもあるという。真野さん、村松さんの乗った船の
船長はひどい皮膚病にやられ、操業半ばで日本に帰ったのことだが、病気の不
安も大きい。
 その夜は結局、夜通しの飲み会になり、尾身さんの部屋で全員、寝かせても
らった。

ダカール港の思い出

 日本人のみなさんに別れを告げ、なつかしのダカール港へ。岸壁に立つと、
胸がジーンとしてくる。
 1968年から69年にかけての「アフリカ一周」では、モロッコのカサブ
ランカ港で愛車のスズキTC250ともどもフランスの客船に乗り、ダカール
港で下船した。
 ほんとうは一番西のルートでサハラ砂漠を縦断し、今回とは逆のコースで
モーリタニアからセネガルに入りたかったのだが、その自信がなく、断念した
のだ。
 あのときの「サハラ砂漠縦断」をできなかった悔しさと、ダカール港に降り
立ち、「さー、これから西アフリカだ!」といった気持ちの高ぶりがまるで昨
日のことのように蘇ってくるのだった。
 1971年から72年にかけての「サハラ砂漠縦断」では、アルジェリアか
らモーリタニア経由でサハラ砂漠を縦断し、ダカールにやってきた。サハラ砂
漠縦断のバイク、スズキ・ハスラーTS250をアルジェであずかってもら
い、今回と同じようにヒッチハイクでサハラを南下したのだ。そのときは自分
一人ではなく、フランス人旅行者のベルトランと一緒。ダカールには4日、滞
在し、船でダカール港沖のゴレ島に渡った。
 そんな思い出のシーンが次から次へとまぶたに浮かんだ。

古都サンルイ

 モーリタニアの大使館でビザを発給してもらうと、ダカールを出発。北のサ
ンルイに向かう。強烈な日差しのもと、ダカール市内からカオラックに通じる
道を歩いていく。あまりの暑さに頭がくらくらしてくる。1時間以上歩き、郊
外に出たところでヒッチハイクを開始。まずはティエスへの道との分岐点まで
乗せてもっらた。
 そこからサンルイへ。
 北に向かうと風景はどんどん乾燥してくる。サハラ砂漠に近ずいているのが
よくわかる。暑さは一段と厳しくなる。
 南京豆の畑が目立つようになる。
 何台かの車に乗せてもらい、夕方、ダカールから270キロのサンルイに到
着。サンルイの町はセネガル川河口に浮かぶ小島、サンルイ島にある。
 この町は1885年にフランス領西アフリカの首都になり、それ以降、西ア
フリカでは最大の都市になった。サンルイにはそのような古都の面影が濃く
残っていた。この町はまた北のイスラム教と南のキリスト教の接点を強く感じ
させた。
 イスラム教のモスクからはコーランが流れ、キリスト教の教会からは賛美歌
が聞こえてきた。町中の屋台で夕食を食べ、ダカール同様、大西洋の砂浜で野
宿した。

=続く=


【30年目の「六大陸周遊記」について】
2002年、賀曽利家の大掃除で発見された未完の原稿「六大陸周遊記」に基づ
いて30年ぶりに著者が完成稿へと仕上げたものです。「六大陸周遊記」は
1973年〜74年にかけて行われた世界六大陸めぐり、著者20代半ばの世界1
周、旅の物語です。


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     【60代編日本一周 第2部】  北海道遺産コラム
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第2回 路面電車

 函館は市電の走る町。町並みの近代化とともに、市電の走る町が日本中から
どんどんと消えていくなかで、函館は健在だ。函館市の交通局が運行してい
る。
 路面電車というのは、乗っているだけで楽しくなってくる。ふらっと乗って
終点まで行き、ぷらぷら歩き、また乗った地点まで戻ってくる。ぼくはそうい
う市電の乗り方が好きなのだ。
 車内では函館のみなさんの話し声が聞こえてくるし、車窓からは普段着の函
館の町が見えてくる。
 ということで、函館駅から歩きはじめる。まずは駅前の交差点へ。そこには
「函館市道路元標」。北海道の幹線、国道5号と国道278号、国道279号の起点に
なっている。国道5号は札幌へ、国道278号は恵山を経由し、森で国道5号に合
流。国道279号は津軽海峡を渡って下北半島を南下し、野辺地で奥州街道の国道
4号に合流する。
 その「道路元標」のある交差点に路面電車の函館駅前電停がある。来た電車
に飛び乗った。谷地頭行きだ。終点の谷地頭駅に着くと、すぐ近くの市営谷地
頭温泉の湯に入る。赤茶けた湯の色。大浴場には高温湯と低温湯の湯船がある
が、ともに熱い。毎朝この湯に入りにくるという人としばし「湯の中談義」を
したあと、立待岬へ。
 その途中には石川啄木一族の墓がある。墓石には啄木の詩、「東海の小島の
磯の白砂にわれ泣きぬれて蟹とたはむる」が刻み込まれている。
 天気は快晴。立待岬に立つと、海に落ち込む函館山の断崖を見る。迫力満点
の眺め。津軽海峡の対岸には下北半島が青く霞んで見えた。立待岬からの風景
を目に焼きつけ、谷地頭から函館駅前に戻った。次に「函館どっく前」行きに
乗り、同じようにして終点の函館どっく前まで行き、函館駅前に戻った。さら
に「湯の川」行きに乗り、終点の湯の川まで行きたいところだが、残念ながら
時間切れということで諦めた。
 鉄道大好きのカソリ(日本の路面電車にはすべて乗っている)が初めて函館の
市電に乗ったのは1980年。今から30年ほど前のことだ。その当時は料金は均一
で全線110円。1日乗り放題の500円券があって、朝から晩まで函館の市電に乗
り、市電だけで函館中をめぐった。
 当時は4系統の路線があった。
1番 駒場車庫前から松風町、栄町経由末広町行き
2番 駒場車庫前から松風町、函館経由谷地頭行き
3番 駒場車庫前から宮前町、函館駅経由函館ドッグ前行き
5番 湯ノ川から松風町、函館駅経由十字街行き
 五稜郭に近い五稜郭公園前と函館のかつての中心街だった十字街は4系統とも
に通っていた。
 今は湯の川と十字街で分かれる谷地頭、函館どっぐ前を結ぶ路線だけになっ
ているが、それでも函館を横断する路線が残っているのがすごい。料金は30年
前のほぼ倍で、2キロまでが200円、4キロまでが220円、7キロまでが240円、10
キロまでが250円となっている。全線に乗っても250円ときわめて安い。
 北海道にはもう1本、路面電車がある。それは札幌で、「すすきの⇔西4丁
目」間を走っている。

この原稿は、カソリングWEBで、現在更新中の「北海道遺産コラム」からの抜粋
です。
http://kasoring.com


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●編集部からのお知らせ
10月28日、無事北海道遺産巡りのツーリングが終了しました。
この旅のために立ち上げた、カソリングWEBでは、現在、その北海道遺産につい
てのコラムを連載中です。ぜひ、一度ご覧ください。また、感想などありまし
たら、ぜひともお寄せください。カソリングWEBからでも、下記メールアドレス
からでも結構です。お待ちしています。
http://kasoring.com/

次号 12月15日予定です。
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 ● MAIL MAGAZINE『カソリング』108号  2009年11月15日発行
   編集・発行 カソリング編集委員会
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posted by ジョッピー at 12:05| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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